長崎NEXTスタイル「実用化に向け 五島で実験進む『潮流発電』」
長崎県の五島で、国内初の潮流発電実験が進められています。このプロジェクトは、海底に流れる潮の力を利用して電力を生成する新たな再生可能エネルギーの実用化を目指しています。潮流発電は、離島地域の安定した電力供給源としても期待されており、その可能性を探るための取り組みが始まりました。
実験に使用される潮流発電機は、高さ23メートル、出力1100kWを誇り、一般家庭約800世帯分に相当する年間241MWhの電力を生成することができます。このプロジェクトを推進しているのは、九州を中心に再生可能エネルギー事業を展開する「殿未来エナジ」。環境省からの委託を受け、2019年度から実験が行われています。
潮流発電は、潮の流れによって生じる海水の動きを利用して、発電機の羽根を回し電気を生成します。その際、潮流が速い海底に設置されるため、漁業との両立が可能で、船の航行にも影響を与えません。実験の第一段階では発電に成功し、次の段階として出力を2倍に改造する計画が進められています。この改造作業は、イギリス製の発電機をもとに地元の三菱長崎機構が担当し、ブレードの角度を調整する機能を追加しました。これにより、潮流の変化に応じて発電効率を最大化することが期待されています。
今回の実験では、潮流発電機で生成された電気を実際に電力系統に送電する国内初の試みも行われます。発電機は水深40メートルの海底に設置され、作業は順調に進み、来年度初めから五島地区への送電が予定されています。この取り組みにより、現在ディーゼル発電機に依存している離島地域の電力を将来的には潮流発電で賄うことを目指しています。
プロジェクト関係者は、地域との協力を重視し、安定した電力供給を実現するための再生可能エネルギーの導入に努めています。潮流発電の効率を最大化するため、常にブレードの角度を調整し、計算通りの発電量を維持することが目標です。将来的には、電池との組み合わせによって、離島のベース電源として実用化を図ることを目指しています。
長崎初の再生可能エネルギーとして注目を集める潮流発電は、今後1年間の実証実験を通じて耐久性やメンテナンス面での課題を明らかにし、実用化や商用化に向けたビジネスモデルの構築を目指します。この取り組みが成功すれば、持続可能なエネルギー供給の新たな道を切り開くことになるでしょう。